適切な距離を保ち、心の落ち着き場所を見つける


823日に強姦致傷容疑で逮捕され、99日に不起訴処分で釈放された高畑裕太事件。
お母さんが芸能人でよく知られた存在であり、事件後も母親が会見を開くなど、露出も多く、釈放後も追いかけられている事件だと思います。

事件が大きく報道され、社会的に色々な反応が巻き起こっていることにより、私の周りでも気持ちを揺さぶられている被害経験者が多いと感じています。

事件そのものではなく、事件と適切な距離をとり、性被害経験のある人が自分の心身と生活を落ち着かせるためにどうすればいいかということを、少しこのブログで整理してお伝えできればと思います。

 被害経験者は影響を受けやすい。

 性被害の経験があるということは、自分の中に自分自身の性被害の出来事の記憶があるということです。
 性被害はトラウマになりやすい出来事であり、トラウマ記憶は適切に処理されなければ、過去の出来事であるにも関わらず、現在の生活にも影響を及ぼしてしまいます。
 現在にも影響を及ぼすということは、自分の被害を思い起こさせるような情報や感覚に接することで、その時の経験が自分の中で再現され、その時の恐怖や苦痛が体験されたり、色々な感情の揺れ動きや症状が出てくることなどです。
 
 性暴力・性犯罪のニュースは、もともとリマインダ(自分の被害経験を思い出させるきっかけ)になります。

 大切なのは、それは過去であり、今は安全であるということを思い出し続けることです。
リマインダ(出来事を思い出させるきっかけになるもの)自体は危なくありません。
しかし、そのリマインダにより自分が影響を受けるならば、長期的にはトラウマを適切に処理していく必要があるし、その間は対応策を考えておくことが大切だと思います。

 どうやったら、安全にニュースに接することができるか、自分を揺れ動かさずに対応できるか。個々のケースで状況が違うので、自分のセラピストなどと相談することも大切だと思います。
また、自分がダメージを受けそうならば、見ない、聞かない、知らないようにするというのも一つの選択肢です。

 私も、自分の感情が揺れ動かされることはわかっているので、自分に余裕がある時に情報を見ることにして、リアルタイムでは見ないようにしています。それでもこれだけ大きく報道されると、毎回のニュースで眼に入ってきてしまいます。バラエティでもとりあげていましたしね。

 そんな場合も、自分にとって安全なレベルまで小さい情報量にするか、見えたらTVを切る。記事を目にしたら閉じるというのも一つの選択だと思います。
 でも気になってしまうという気持ちもわかります。
 その場合、映像は影響が大きいので、「新聞などの文字で読むということもいい方法だよね」と仲間と話し合ったことがあります。


 高畑佑太の弁護士の「合意があるものと思っていた可能性が高く」という声明文をメディアが一方的に流したこと

 弁護士は、依頼人の利益を守るのが仕事です。そのためには、色々なことをします。
一般的に、弁護士は人権を擁護する正義の味方という認識をしている人が少なくないと思います。そのような仕事をしている人にすらわかってもらえないのかと思うことで、被害経験のある人が、しんどくなる場合があります。
しかし、依頼人の利益を守ることが弁護士の仕事なのだと、割り切ったほうが楽になる可能性があります。
特に加害者弁護をする人は加害者側の利益を守るために働いています。加害者側のために働いている人が、何を言っているとしてもそれは加害者の利益を守るための発言なので、自分の考える事実や正義とはあまり関係ないのだと、距離を置いて捉える必要があると思います。

 問題は一部メディアが、弁護士側の声明文を一方的に流したことです。予断を与えかねず、被害者側の意見も掲載されませんでした。
公正な報道と云う視点で大きな問題であり、被害者に取材できなかったとしても性暴力被害者弁護に詳しい弁護士の意見を入れるなど、対峙する側の見方を示すことが必要なのではないかと思います。


検察側の不起訴と云う判断

検察側の不起訴と云う判断理由が説明されていないので、嫌疑不十分なのか起訴猶予なのかわからないと言われています。ちなみに二つの違いは、嫌疑不十分が「立件するだけの条件に欠ける」、起訴猶予が「立件できるが色々な可能性を考えしないことにした」という違いだそうです。

大きな事件を起こしたと報道されたのに、起訴もされないのかと思い、絶望を深くした人もいるかもしれません。
私たちは検察や検察、裁判所などが必ず正しい判断を過ごしているように思いがちです。しかし、必ずしもそうではないということを知る必要があると思います。
必ずしも真実を明らかにするためや正義を守るための司法であるとは思わないほうが、無用な幻想に傷つけられずに済みます。そもそも109年前につくられた刑法が、性暴力・性犯罪の実態を反映したものではないということもあります。
報道されたような事件なのに裁かれないのかとショックを受けることがあるかもしれません。でも、そう思う必要はないのです。
大切なのはこの事件も、多くの性暴力・性犯罪事件の一つであるということです。
芸能人一家で大きく取り上げられていて、性犯罪を象徴する事件のようになっていますが、決してそうではありません。

日本の現状を表しているとも思いますが、数多い性暴力・性犯罪事件の一つであり、本当に望ましい在り方は何であるのかということを多面的に考えていくことが大切だと思います。

社会の反応

 被害者の身元を特定しようとしたり、被害者側にも、加害者側にも賛否両論さまざまな意見が寄せられたり、疑問や中傷を浴びせられたりする場面が多くみられました。
被害経験者の立場から見ると、世間の人はこう思っているのか、社会はこのくらいにしか受け止めていないのかと様々なショックを受けているかもしれません。

私の子どもの頃にも「世間様が何というか」「世間様に顔向けできない」という言葉をよく聞き(今は死後でしょうか?)、社会の反応と云うのは気になる事ではあります。
しかし、本当は世間などないのです。
巷やネットで言われていることは私たちの実生活とは全く関係ありません。
自分の周りの、あなたの存在を尊重し、あなたの境界線や心を大切に思う気持ちがある人と接しましょう。
実際にあなたのそばにいる誠意ある人の声に耳を傾けましょう。

被害経験があると、こういう事件が起こったときグッとひきつけられがちですが、それこそがトラウマの影響だと考えられます。

自分を安全な環境に置くこと。
安心した生活を送る事。
よい睡眠をとること、栄養のある食事をとるこ、身の回りの清潔を保つこと。

淡々と日常生活を送ることが大切なことだと私は思います。
繰り返しになりますがお伝えしたいのは、これは、ひとつの出来事です。
あなたはあなたの生活、あなたの人生をもっとより良い方向に進ませることができます。

心が動いてしまうことも、やり場のない怒りがこみあげてきてしまうことも、悔し涙にくれてしまうこともあります。


それでもなお、適切な距離を保ち、心の置き場所を見つけて、あなたの人生をより充実した幸せなものにしてくださるよう心から願っています。



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